植物オルガネラワールドについて

私達はたくさんの植物に囲まれて生活しています。野菜や果実を食べたり、衣服や住まいの材料として利用したり、植物なしでは私達の生活は成り立たないと言っても良いでしょう。また、二酸化炭素と水から酸素と有機物を作り出すことによって、ヒトだけではなく他の地球上の生き物にとっても、植物はなくてはならない存在です。

植物は動物と異なり、生きている場所から動くことができません。環境が悪くなってもそこで頑張って生きていかねばならないのです。そのため、植物は動物とは異なる環境応答の仕組みを発達させてきました。最近の植物科学研究の成果から、細胞内に存在する小器官 ‘オルガネラ’ が、様々な環境応答の変化に関わっていることが明らかになってきました。これには、2008年のノーベル化学賞に輝いたGFPをはじめとする可視化技術の発達が大きな貢献を果たしています。GFPなどを目的のオルガネラへ送り込むことが、遺伝子工学的に可能になり、生きた細胞の中を観察できるようになったのです。その結果、ダイナミックなオルガネラの様子が明らかとなり、オルガネラの理解への解明、そして植物の生き様への理解へとつながってきています。

こうした植物オルガネラ研究推進を目的として、2004年に科学研究補助金特定領域研究「植物の環境適応戦略としてのオルガネラ分化」が発足し、5年にわたって、全国の植物研究者とグループを形成して研究を進めてきました。得られた成果は高い評価を受け、その多くは英語の論文として世界へ発信されています。また、研究の中で得られた画像や動画を収集したデータベース ‘The Plant Organelles Database (PODB)’ を一般に公開し、特定領域研究後も植物科学研究の基盤として役立ててもらっています。

しかし、これらはあくまでも研究者を対象としたアウトプットです。一般の方にとっては、難しい単語も出てきますし、英語で理解するのは大変です。これでは、せっかく得られた研究成果や面白い現象も研究者間のみで共有するだけとなってしまいます。そのため、PODBを基盤とした一般の方を対象としたデータベース ‘植物オルガネラワールド’ を、2010年3月に一般に公開しました。‘植物オルガネラワールド’ では、PODBと同様に可視化されたオルガネラの画像や動画がご覧になれますが、説明の文章は日本語で書かれおり、なるべく専門用語を使わないようにしました。また、PODBにはないオルガネラの機能がおかしくなった場合の植物体の様子など、一般の方が興味をもっていただけるような内容も新たに加えました。

本データベースが、皆様の植物への関心をもつきっかけとなれば幸いです。

植物オルガネラデータベース作成委員会

なお、本データベースと同様、一般の方を対象とした植物オルガネラの写真集 ‘Photobook 植物細胞の知られざる世界’ が、株式会社化学同人より出版されています。こちらも是非ご参考ください!

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